「ドゴォ!!」
兄が母親を殴った音はリビングに響き渡りました。
倒れる母親。
兄はボロボロと泣いていました。
きっと、限界だったのでしょう。
そこまで学校での虐めは酷いものだったのだと思います。
母親は骨折しました。
水腎症という障害を乗り越え、生き長らえた命。
それを虐めという計り知れない脅威が、兄を襲っていたのでしょう。
何ヶ月も病院へ泊り込み、看病してくれた母親への暴力。
それは兄が完全に壊れてしまった事を表していました。
兄はその場で泣き崩れていました。
とにかく、母親を病院へ連れて行こうと思い母親に近づくと
「大丈夫だから。自分で病院行くから。」
小さな声でそういって家を出て行きました。
その間も兄は泣いていました。
毎晩繰り返される母親と父親の喧嘩、ストレス発散に使われる子ども、虐められる二人の兄。
一体、何が正常なのかさえ解かりませんでした。
涙が僕の頬を静かに流れていきました。
もう……戻れない。
何もかもが終わった。
必死で仲良し家族を作っていたが、今日で全てが終わりだ。
家族への絶望、虐めを放置する先生、虐待をする両親への激しい怒り、誰にも言えない悲しみ。
心は本当に混沌としていました。
全ての負の感情が体の中で渦巻いていました。
もう終わりだ・・・。
張り詰めた糸が切れた瞬間でした。
あの日の夜、僕は初めて自殺未遂をしました。
次男の目の前で刺身包丁でお腹を刺そうとしたんです。
「俺なんて産まれて来なければ良かったんだろ!だったら死んでやるよ!!」
そう泣き叫びお腹に包丁を刺そうとした瞬間、次男が飛び込んできて止めてくれました。
次男は号泣していました。
「死んじゃダメだよ・・・。それだけはダメだよ・・・。」
泣きながら小さな声で言いました。
僕も号泣していました。
辛かった・・・。
助けて欲しかった。
普通の家庭に産まれたかった。
虐めを無視して欲しくなかった。
あの夜、溜まっていたものが全て爆発したのでしょう。