僕は・・・心に決めていたことがありました。
親、長男と話が終わったら死ぬ事。
もう何も思い残す事は無いし、生きていたくない。
生きていて感じるのは負の感情だけ。
辛い、悲しい、苦しい。
涙も出ない程、負の感情に麻痺した心。
その心で生きていくには、僕の心は弱過ぎました。
未来なんて想像出来なかったし、したくもなかった。
だから、死のうと決めていたんです。
深夜二時、僕は団地の屋上に一人で行きました。
一番思い出の詰まった場所に。
一番辛い思いをしながら、生き抜いた場所に。
屋上の端っこに立って、深呼吸しました。
息は白く、空へ上がっていきました。
「ここから落ちれば・・・全部終わる。」
ポツリ、そう言って飛び降りるつもりでした。
死ぬ事には恐怖よりも期待をしていました。
だから、足を出すのは怖くなかった。
最後の一歩を踏み出そうとした瞬間でした。
友達の顔が一つ一つ浮かんで来ました。
みんな、家庭で辛い思いをした友達の顔でした。
その友達の笑顔ばかりが浮かんできたんです。
僕は屋上の端っこにチョコンと座りました。
足はブラブラ宙に浮いたまま。
浮かんでくる友達の顔を死ぬ前に見ていたかった。
しばらく座っていました。
死ぬ前だから思い残さないように・・・。
死ぬ前にみんなの顔を見ておこうと思って・・・。
でも、友達の顔が消える事はありませんでした。
涙がポロポロ零れていきました。
冬だったせいか、涙はすぐ氷のように冷たくなっていきました。
でも、出てくる涙は暖かくて、それが止まる事は無くて。
「死にたいのに・・・。」
泣きながら、ただ一言だけ、そう呟きました。
死にたいのに。
もう嫌なんだ。
腕を刻まなければ生きて行けない弱い自分が。
過去に縛られて身動きが取れない自分が。
作り笑いをし続ける愚かな自分が。
普通の人が普通にしている事が出来ない自分が。
体だけ生きている苦痛を味わう事が。
感情が死んでしまった心で生きていく事が。
こんなに死にたいのに、友達がそうさせてくれない。
友達に会いたい。
みんなに会いたい。
明日生きていても同じ辛さを味わうだけなのに。
そんな簡単な事は解かっているのに。
みんなに会いたい、ただ、会いたい。
何も話さなくて良いから。
何もしてもらわなくて良いから。
隣りにいてくれるだけで良いから。
そう思うと屋上から地面へ涙の粒がポロポロ落ちていくんです。
どれぐらい時間が経ったのか、解かりません。
気が付くと朝日が出始めていました。
団地は少しずつ朝を向かえ、人も少しずつ動き始めました。
自然と屋上から離れたくなって。
僕の最後の自殺未遂が終わりました。
まだ自分の心が壊れている事に気づくほど、冷静ではありませんでした。