心の声が頭の中に響き始めました。
自然と僕は目を閉じていました。
まぶたにあの頃の自分が浮かんできました。
10歳ぐらいの時の自分でした。
顔が腫れ上がり、体の見える部分はアザだらけの自分が。
そして、その子は聞き取れないような小さな声で言ったんです。
「痛いよ・・・。」
痛い・・・?
痛いの?
見た目だけ見れば確かに痛いと言っても不思議ではなかった。
でも、「痛み」というものから僕は長い間遠ざかっていました。
だから痛いという言葉が心には入ってこなかった。
その病気の名前は無痛症。
長い間、暴力の下で生きていた僕は痛みを普通に感じていたら生きてなんていけなかった。
体が、本能が僕を生かすために痛覚を鈍らせたんです。
長男や両親の暴力は僕の体と心を破壊してしまったようです。
虐待児には珍しくない症状のようです。
でも、誰だって殴られれば痛いはず。
僕の心が「普通」の事を言うなんて考えられなかったのでしょう。
それでも、やっと聞こえた心の声を大事にしようと思いました。
思い込むかのように僕は痛かったんだ、と言い聞かせました。
それは一日とか、そんな短い期間では無く今も続けています。
毎日、一回はあの頃を思い出し痛かったのだ、と言い聞かせる。
心の声を無視すれば、もう話してくれなくなるかもしれないから。
だから自分の心に正直にいようと思ったんです。
そして、あの頃の自分が一番して欲しかった事をしようと思いました。
その小さい子どもを抱きしめました。
もちろん、現実には居ないわけですから気持ちだけになりますが。
それでも、その感覚は現実とさほど変わらない程リアルだった。
子どもは抱きしめ返してきました。
目に一杯の涙を浮かべながら。
その目は腫れていてほとんどあいていなかったけれど。
そして涙がゆっくり、彼の頬を伝いました。
目をあけると僕の頬は涙で濡れていました。