2007年12月3日月曜日

原罪

確かにHPに書いてあった文章は僕の心を揺らしました。

何にも反応をしなかった心が顔も知らない誰かに揺らされた。

それは確かな事でした。

でなければ、あんなに涙が零れる事は無かった。








しかし、僕の心に染み付いた虐待児の傷はそう簡単に僕を解放してはくれなかった。






涙を流しながら、悲しみに暮れる自分に激しい怒りを感じました。

そして、僕の中のもう一人の自分がささやくように語りかけて来ました。








「どうせ甘えたいだけなんだ。そうやって弱い自分を演じて楽しんでるんだろう?」








涙が止まらない自分に、危機に近いものを感じたのかもしれません。








感情は押し殺すものであって、表には決して出すものではない。






こんな考えが無意識のレベルで染み付いていました。

どんなに悲しくても。

どんなに苦しくても。

どんなに辛くても。

それは表に出してはならない。








誰にも理解なんてされないのだから。






感情なんて無駄なもの。

何も感じなければ傷つく事は無い、強くある事が出来る。

感情を殺す事で強くある事が出来た。

いや、それも勘違いだったのでしょう。

ただ強がっていただけ。







弱い自分なんて価値は無い。






全ての弱さは冷静に分析をし、改善を図る。

弱さはその為だけに存在し、それ以上でも以下でも無い。

自分を高めるだけのもので、自分の気持ちがどうなろうと知った事ではありませんでした。

その時に大切だったのは自分の気持ちでは無く、世間的に見た自分の強さだけでした。

見栄だけを張り表向きには強い人になったつもりでした。








その奥でいくら傷ついていても気付かない振りをし続けました。






それは長い間続けると、もはや振りでは無く本当に何も無かったかのような錯覚さえもたらしました。

だから、自分は強いのだと思い込んでいた。

何にも動じない心を遂に手を入れたのだと。








でも、目の前にある顔も知らない人が書いた文章に、僕の全ての強がりは砕かれてしまった。







見透かされてしまった。

自分の強がりが。

自分の傷が。

そして、文章は決して抽象的では無かった。

虐待児が感じる主な負の感情の反応を書いてあるだけだった。











「不当な扱いには怒りの感情を感じるべきで、それは自然な反応である。」

「失われたものへは悲しみを感じても構わないし、それが人として当たり前の反応だ。」

「悲しんでも良い、怒っても良い、それが不当な扱いを受けた当たり前の反応だ。」

「当たり前に人が持っているものを、持ち得なかった事を悲しんでも良い。それは弱さでは無い。」










ただ・・・涙は溢れるばかりでした。

自分の人生を掛けて手に入れた「強がり」がガラガラと崩れていきました。

圧倒的な暴力が、圧倒的な屈辱が、圧倒的な悲しみが、圧倒的な苦しみが僕を狂わせた。

そして、その事を弱さだと感じる必要は全く無い。







なぜなら虐待という事実は人を壊すには十分過ぎる威力を持ったものだから。













「生まれてきてごめんなさい」なんてもう言わなくて良いんだ。

2007年12月2日日曜日

文字と言葉

春のある日。

僕はPTSDについて、虐待について知識を収集していた時の事。

主にネットと本で知識を集めました。







少しでも自分の状態を詳しく知りたかった。






医者にそれを聞けるほど、僕は医者に心を開いていませんでした。

今も、病院は五分も面接しないで終わりにしています。

病院は薬を貰う所で話を聞いてもらう場所じゃない。

いつの間にかそんな思いが僕の中での当たり前になっていました。

きっと誰にも解かってもらえないから、話すだけ無駄だと。






人に期待なんてしてなかった。






人に無関心でいれば傷つかずに済む。

自分の傷は自分だけの問題。

だから周りに迷惑をかけたくなかった、いや、自分の一番深い所に踏み込まれたくなかった。






そしてあるサイトを見つけました。





星の数ほどあるHPの中、僕はそのページに辿り着きました。






文字を見て初めて号泣した。





そこには・・・。

虐待児がPTSDに至る過程や、その後のケアについて詳しく書かれていた。

そして、虐待児は自分の事を許してあげて欲しいとかかれていた。

腕を切る事も、理解されない苦痛も、悲しすぎる過去を背負ってきた自分をこれ以上責めないで、と。





「泣いても良いんだよ。

苦しかったら苦しいって言っても良いんだよ。

悲しかったら悲しいって言っても良いんだよ。

辛かったら辛いって言っても良いんだよ。」









涙が止まらなかった。








一番言って欲しかった言葉。

一番聞きたかった言葉。

名前も知らない誰かが書いた文章。

その文章に僕の心は救われた。

心の悲鳴が初めて聞こえた気がした。






こんなにも辛かったのか、と。




こんなにも傷を見ない振りを続け、心を殺してきたのかと。

涙は止まらず、夜の自室に僕の嗚咽が静かに響いていました。













心が静かに、ゆっくり、しかし確実に揺れた春の日の深夜の事でした。