あの頃の僕の精神は非常に不安定でした。
何も感じない時がほとんどでしたが、急に涙が溢れる事があったり。
何も感じない時を言葉で表すなら、「凍った心」だと思います。
氷のように固く、冷たい心でした。
自分で自分が解からない。
ただ激しい自殺願望だけは消える事はありませんでした。
そして去年の八月。
忘れもしない。
外での用事を済ませ、帰る途中でした。
時間は夕暮れ。
夏の夕暮れらしく、空は紫色になっていました。
歩きながらふと目に入ってきたものがありました。
それは家族でした。
僕は彼らを後ろから見ていました。
父親と母親の間で小さな男の子が手を繋いで歩いていました。
その後姿はとても幸せそうに見えました。
なんとなく足が止まって、見つめてしまいました。
母親が片手に買い物袋を持っていました。
これから夕食を作るのでしょう。
ありふれた普通の家族でした。
夕日を正面にして、歩くその姿はとても綺麗だった。
そしてその家族は道を曲がって僕の視界から、ゆっくりと消えていきました。
その瞬間。
涙が溢れました。
何故だろう?
今でも解かりません。
涙が溢れたんです。
羨ましかったのかもしれません。
自分もあぁやって歩きたかったのかもしれません。
単純な憧れだったのかもしれません。
僕の心の傷を優しく包んでくれたような気がしました。
心はゆっくりと氷点から這い上がろうとしていました。